最高裁判所第一小法廷 昭和42年(オ)1246号 判決 1969年12月18日
上告人 三田用水普通水利組合
被上告人 国 外一名
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人松原正交の上告理由第一点について。
原判示上目黒村等一四ケ村の農民およびその水利団体が徳川幕府から設定を受けた水利権は、灌漑を目的とする水利権であつた旨、上告人組合およびその前身である水利組合(以下、これらを合わせて上告人組合らという。)の有した水利権は雑用、工業用をも目的とするものであつたとは認められない旨、および上告人組合らの右灌漑用農業水利権は、昭和初年にいたり、組合区域がことごとく宅地化され灌漑の用途が全くなくなつたため、その頃消滅したものである旨の原審の認定判断は、原判決(その引用する第一審判決を含む。以下同じ。)の挙示する証拠関係に照らして首肯するに足りる。所論は、原審の認定にそわない事実を前提として原判決を攻撃するか、原器の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するに帰し、原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。
同第二点について。
所論の点に関する原審の認定は、原判決挙示の証拠関係に照らし、肯認することができる。原判決に所論の違法はなく、論旨は採ることができない。
同第三点について。
所論違憲の主張は、その実質は、単なる法令違反の主張に帰すると解すべきものである。そして、原審の、上告人組合らが昭和初年以前に有した水利権は、雑用、工業用を目的とするものではなかつた旨の認定が是認できることは、右第一点に対して説示したとおりであり、また、所論の指摘する原判示も肯認することができる。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用するに足りない。
同第四点について。
所論の理由がないことは、右第三点に対して説示したところにより明らかである。
論旨は採用するに由がない。
上告代理人芦苅直已、同石川悌二の上告理由第一について。
原審は、挙示の証拠により、上告人組合らが有した水利権は、灌漑を目的とする農業水利権であつて、雑用、工業用をも目的とするものであつたとは認められない旨を適法に認定判示している。所論は、右と異なり、本件水利権には使用目的による制限はなかつた旨主張して原判決に所論違法があるというのであるが、ひつきょう、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するに帰し、採用することができない。
同第二について。
所論の点に関する原審の判断は、正当として是認できる。そして上告人組合が、その管理する用水を事実上雑用、工業用にも処分していたことが、直ちにそのような水利権の存在を示すものでないことは、原審の判示するとおりであり、また、所論水積二一坪に関する原審の判断が是認できることは、上告代理人松原正交の上告理由第二点に対し説示したとおりであるから、所論二の(1) (2) は理由がない。原判決に所論の違法はなく、論旨は採ることができない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判官 入江俊郎 長部謹吾 松田二郎 岩田誠 大隅健一郎)
上告理由<省略>